「いびき」がきつくありませんか?
年を取ると夜中の「いびき」がきつくなるようです。お酒を飲み過ぎた後などでは余計ひどくなります。のどの奥の筋肉(軟口蓋)が緩んでしまうからなのでしょうね。「ガーガー、ピーピー」とやっているうちに、ピタッと息が止まってしまうことがあります(無呼吸)。これが数十秒も続くとさすがに苦しくなって「ガホッ!」となって息を吹き返すことになるのですが、このようなことが毎日繰り返されると熟睡が出来ないことになってしまいます。その結果、疲労の蓄積、日中の眠気、注意不足、など仕事への悪影響が起こることになってきます。試しに息を1分止めてみてください。終わった後はマラソンの後のように「ハーハー、ドキドキ」がしばらく続くはずですね。血圧も上がります。これは酸素不足のために命の危険を感じた肉体が危機を打開しようと闘争神経である交感神経を緊急出動させた結果なのです。こんなことが毎晩繰り返されると体に良いはずがありません。不整脈、高血圧、心不全、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、夜間頻尿、性機能低下、メタボリックシンドローム、突然死、などの引き金になると警告されているのです。これでは長生きはとても望めません。
こんな無呼吸状態を「睡眠時無呼吸症候群」といいます。全人口の15%が該当するらしいですが、やはり太めの高齢者に多いのですが、細身の若人でも起ることがありますから「いびき」のきつい方は要注意です。男性が多く女性の6倍もあるそうですが,女性でも閉経期を過ぎると同率になってくるということです。
この「睡眠時無呼吸症候群」、最近は比較的簡単に知ることが出来ます。例えばスマホの無料アプリで「SnoreLab」というものがあったりします。これは一晩中のいびきを記録して、息が止まっている時間を表にして見せてくれますので、心当たりのある方は一度やってみられると良いかもしれません。
いよいよ怪しいとなれば本格的な検査が必要になります。当院でも行っているのですが、「終夜睡眠時ポリグラフィー」といって、お家で一晩、鼻と喉と胸と指先に小さなモニターを付け、眠っている間のいびき音、喉のうなり、体動、心拍数、血中酸素濃度などを記録するのです。(より詳しい所では一晩入院してこれに脳波や映像などを加えるところもあります。)これで見ると、うるさい「いびき」に続き呼吸が止まると、無音になり、しばらくすると体は揺れ動き、脈拍が上がって血中酸素濃度が下がってくることが手に取るようにわかります。この無呼吸状態が1時間に20回以上起きることを確認すれば「睡眠時無呼吸症候群」という診断となるのです。これは何とか治療しなければなりません。
軟口蓋と舌が落ち込むことが原因ですから、まず仰向きより横向きで寝ることをお薦めします。これが結構有効なのですが、長年の習慣はなかなか変えられずなかなかうまくいかない場合が多いのです。そこで枕を変えたり、顎を前に移動させるマウスピースをはめたり、鼻孔を広げるデバイスをつけたり、鼻粘膜内レーザー照射など苦闘が始まるわけですが、残念ながら根本治療にはならないのが実情です。そこでいよいよCPAPという呼吸補助装置の出番ということになります。
CPAPについて説明させていただきます。図のように小さなマスクを鼻に装着します。
無呼吸状態を感知すると自動的に呼吸1回分の空気を送ってくれるシステムになっています。最初は慣れないのですが、慣れると熟睡できるので、体調がよくなり、日中の眠気がすっかり消え、仕事の能率が上がることは確実です。他にも血圧が下がった、不整脈が治った、糖尿病が改善した、夜中のトイレが減った、お肌がきれいになった、男性機能が回復したなど、意外な効果があったりして「もう手放せない」というお声が圧倒的です。
費用ですが、検査のための費用が3割負担の方で¥2000~3000、毎月のCPAP利用料が¥4000~5000というところです。効果の大きさを考えると決して高くはないと思うのですが…。夜中に口内が乾燥する、トイレでたびたび覚醒する、どうも「いびき」がひどいらしい、日中の眠気が強すぎる、心房細動という不整脈がある、などの異常を感じられているのでしたら一度「終夜睡眠時ポリグラフィー」を受けてみられてはいかがでしょうか。人生が変わるかもしれません。