年とっても元気な人の特徴

寺岡内科医院 院長の元気塾202211淀川区の介護認定審査会委員をしていますので、高齢者のつらい様子がよく伝わってきます。体が不自由になって介護の申請をしようという人は、後期高齢者が始まる75歳以上で急に多くなってくるようです。

その中のある74歳の認知症の方の例です。「家族、ご近所との関わりが少なく独居状態、外出はほとんどせず、曜日の認識はなく、食事は人まかせ。記憶力が低下し、投げやりで介護を拒否。全身の体力が低下。」こんな状況に加えて、腰痛や半身不随、失禁、の問題が加わる方も多いです。皆様とは違うかもしれませんが、世の中にはこんな老人の方もたくさんおられるのです。

それかと思うと80歳を超えても元気モリモリでゴルフを楽しみ、話題も豊富、人付き合いも良く、老いてなお盛んという方もおられます。同じ老後でありながらこの大きな差は、運命ばかりでは説明できないものがあります。経済力、生活習慣、心がけといった日々の営みが影響するようです。その分かれ目が定年を迎える頃、65歳ころという気がするのです。そこで元気な老後を過ごしておられる先輩方を参考に、元気でいるためのいくつかのヒントを提案させていただきたいと思います。

まず申しあげたいのは「現役である。」ということです。よく「退職後は悠々自適で過ごしたい。」などといいますが、実際はなかなかこうはいきません。することもなく頭、気力、体を使わないままに一日が過ぎてゆき、結果、回転は鈍く世間から遅れてゆくことになりがちです。これがボケの入り口です。当然体もなまります。筋力が落ちれば骨は弱弱しくなり、気力、免疫力さえ落ちることになります。
   
人間は「義務と称賛」がないとなかなか動けない動物ですから、老後は動くための動機を作らなければなりません。そこでたとえ会社を辞めても、ぜひ何か世間のお役に立つ仕事を持ち続けることをお薦めしたいのです。第二の就職であったり、地域のために役立つことであったり、新しい勉強であったり、きっと健康のプラスになるはずです。
次に肉食とコレステロールの誤解を解くことです。「もう歳だからコレステロールが多い肉は食べない。」という方がおられます。これは逆です。高齢者ほどお肉を摂っていただきたいのです。
肉には多くのメリットがあります。3大栄養素のたんぱく質であり、生命活動の原点といっても良いくらいです。ホルモン、酵素、遺伝子、抗体もたんぱく質ですから、生命に直結する重要なものであることはおわかりでしょう。

ここでは「幸せホルモン」に焦点を当ててみたいと思います。「幸せ!」と感じるときには脳でセロトニンというホルモンが分泌されています。子供のころ母親に抱いてもらった時の幸せ感の源です。このホルモンが足りないと「うつ病」になることがわかっています。残念なことに歳とともにセロトニンの量は減ってゆき、ひどいと意欲のないショボけた老人になります。セロトニンの主要な原料はトリプトファンというアミノ酸で、肉に多く含まれるのです。またセロトニンは免疫力、睡眠、内分泌にも関係していて、セロトニンを増やすことはいいことづくめです。

一方のコレステロールですが、なぜ嫌われるかというと、心筋梗塞、脳卒中による死亡が増えることが理由になっています。しかしコレステロールが細胞膜、性ホルモン、副腎皮質ホルモンの原料になっていることを忘れることはできません。本来は超重要な体の構成成分です。しかも日本人の最多死因は「癌」であって、欧米のように心筋梗塞、脳卒中ではありません。コレステロールが少し高いくらいの方が免疫に有益で、癌による死亡率が低いという説もありますので、日本の高齢者はもっと肉を食べても良いのです。

昨年99歳でお亡くなりになるまで心身ともにお元気であった瀬戸内寂聴さんの健康の秘訣は、「毎日お肉を食べること。」と言っておられました。お坊さんが言われるのですから間違いありません。(以下次号)