新時代、病院、診療所の変革が迫っています
バブル崩壊以前は大企業の健康保険組合は大変豊かで、厚生事業の一環として豪華な保養所を各地に設けていたものです。時代は変わり若年人口が減る一方で社会は高齢化に向かい、高齢者医療費の増加で財源を若者の健康保険組合からの拠出金に頼らざるを得ない社会構造となってしまいました。その結果今ではどこの健康保険組合も火の車、かつての保養所だったところは軒並み売却の憂き目にあっています。
日本は65歳以上の高齢者が人口の1/4を占めるという超高齢化社会を迎えています。医療行政のおかげで寿命が伸びたのはうれしいことですが、病気がちの高齢者が増えたことで医療費増大となり国の財政を圧迫している現状です。
問題となっている後期高齢者医療でその財源を見ると、本人負担が10%、税金が50%、現役世代の負担が40%、という内容です。この40%が健康保険組合からの拠出金ですから、そりゃ組合の力も落ちるはずですね。このまま高齢者は2040年まで増え続けますから、健康保険財政に大きな不安がのしかかっているのが現状です。
この困難に対応するために国(厚労省)は新しい「地域医療計画」を本気で推し進めようとしています。私たち一般国民にとっても、医療関係者にとっても、大きな変革が予想されます。
今回は2040年に向けての医療体制構築のために、病院・診療所の機能再編、都市と地方の医療格差解消、IT技術の活用、などについて政府が考えている政策について患者目線で分かりやすくお話させていただこうと思います。
まず診療所の変革です。風邪やケガや予防注射などの日常的な診察に加え、増加する高齢者向けに「かかりつけ医」機能が重要になってきます。高血圧や糖尿病などの慢性疾患、認知症対応、在宅医療、介護関係などの多職種との連携を担う中心的存在となるよう期待されています。周りの関係者との連携が必要になりますから、ますます医者は忙しくなりそうです。
患者さんは1つの診療所と長く付き合うことになり、継続的な健康管理、夜間や救急時の相談、訪問診療、自宅での点滴や看取りをしてもらうようになります。また複数医での重複した処方や検査を省くためにネットを通じての情報共有が進められます。地方部では医者が相対的に少ないため「オンライン診療」が当たり前になって来そうです。都市部では医者が集まり過ぎているため、開業制限がかかる準備がされています。規制が実現する前に駆け込み開業が多くなるかもしれません。一方で診療所同士の競争激化、より狭い専門化、患者さんの囲い込み、などが起こりそうです。診療所では「毎度お越しいただき有難うございます」という挨拶が見られるのかもしれません。
受付ではマイナンバーカードが主流になり、電子処方箋が薬局に瞬時に届き、カード決済されるなど、重要な設備はもちろんデジタル技術ですから、医者はますますパソコン画面に集中し、AI情報に重点を置いたスピーディな診療スタイルになってゆくのでしょう。こころが通わない医療にならないか不安が残ります。まあ賢い日本人のことですから、きっとデジタル技術とアナログ診察の折り合いを見つけることでしょうけれど。
次いで病院の再編です。病院は4ツの区分となります。
①高度急性期病院/ICU、重症救急など・・・
国立循環器病センターなど
②急性期病院/手術、入院治療など・・・
公立病院、いわゆる総合病院など
③回復期病院/(心臓、呼吸器、整形)リハビリなど・・・
④慢性期病院/長期入院、看取りなど・・・
全体として費用のかかる急性期病棟を削減する方向です。このようにして病院機能の整理を行い医療の無駄を計ろうとしています。都市部では高度医療のために大規模病院への集約、癌や心臓病を担う専門病院化が進みます。人口の少ない地方では公立病院の統合、病床削減、小病院の有床診療所化、在宅拠点への転換が計られます。困難な病気は都市部の専門大病院へ送り、長期療養患者はなるべく現地でという構えのようです。この構想に対し大学病院の人脈や市町村の医療構想が絡んで来るので、実現には時間がかかりそうです。
現在日本の病院の60~70%の病院が赤字経営を強いられています。補助金が無ければ公立病院などは100%赤字でしょう。理由は多くありますが、診療報酬が公定価格であり経費増の価格転嫁が出来ない、採算を無視した良心的医療や高度医療、長期入院の単価が下落、など構造的な問題点が指摘されます。
そこで高市首相がいうように病院重点の診療報酬の改定が進められようとしています。当然保険料は上がる方向でしょう。多くの問題点を抱えている日本の医療政策ですが、世界との比較で見ると国民皆保険制度、生活保護支援、高額療養費制度などによって貧富に関係なくほとんどの人が最高レベルの医療を受けられる体制になっています。こんな国は世界中見回しても日本以外にありません。
世界最高の保険制度維持のためには痛みを伴う改革も必要かもしれず、たとえば高齢者の一部負担金増、高額療養費制度の見直し、超高額医療の保険適用制限、終末期の無駄な治療排除、OTC医薬品の拡大、などの厳しい意見にも耳を傾ける必要があるかもしれません。国民の知恵を出し合ってこの素晴らしい国民皆保険制度を何とか守ってゆきたいものです。