日米の医療の差、国民皆保険制度の有難さ

寺岡内科医院 院長の元気塾2023075月から新型コロナは感染症2類から5類に引き下げられたのですが、それ以降じわじわと増えています。厚労省によると、お盆過ぎの1週間で13000人程度の届けがあり、第7波もといえそうな増加です。当院でも6月ごろから増え続け、8月中はほとんど毎日2~5人の方が来られます。ほとんどが20代から50代の若い人たちで、1、2日の高熱以外はあまりしんどくないようです。ワクチンの効果は感じられません。

ところでこの3年のコロナ事件について、WHOやCDC、ファイザー、モデルナなどすべてアメリカ主導で動かされてきたことをお感じになっていることと思います。さすがアメリカの医学のレベルは違うと思われた方も多いのではないでしょうか。確かに最先端の分野では研究費も桁違いに違うし優秀な学者の厚みがちがうことは事実です。しかし、アメリカの実際の医療となるとどうでしょうか。医療を受ける側の目で追いかけてみましょう。

日本は国民皆保険ですがアメリカは任意の民間医療保険であることをまず知っておいてください。任意ですから保険料と保証の大きさはピンキリですが、年間の保険料は平均世帯、平均保証で、200万円以上となります。(日本50万円弱)。平均年収が1300万と450万の違いはあるものの、家計に与える比重は1.5倍大きいのです。ところがこの医療保険に加入できない低所得者層が全体の1/7あると聴いてびっくりします。この人たちは売薬で済ますしかありませんし、重病になれば治療をあきらめるしかないのです。金の切れ目が命の切れ目となります。ただ特別のテクニックを使えば克服することもできるのですが……。後で述べます。

もし風邪になったら、米国での診療代は22000円程度です。3割負担の日本人だと6600円の感覚ですから3倍ほど高額です。虫垂炎になった時の試算です。救急車代が15万円、手術入院費用が600万円(1泊)となります。これをどれくらい保証するかは保険のランクによります。これが日本では、救急車が無料、手術入院費用が3割負担で約20万円(7泊)です。約1/10くらいでしょうか。出産では普通分娩で350万円、帝王切開では540万円、日本では45万円だそうです。一事が万事これなのです。お金のない人たちの心が荒れるのも無理がありません。

先に「医療費逃れの特別なテクニック」といいました。まず第一番目に病院脱走という手があります。次に値引き交渉ということがあります。また医療者の行為に難癖をつけて補償金を引き出すということがありますし、訴訟に持ち込んで賠償金を獲得する賢い方法があります。ですから病院スタッフは落ち度がないよういつもピリピリ状態で仕事をしなくてはなりませんし、医療訴訟に備えて多額の保険をかける必要性がうまれ、これが医療費を底上げするという悪循環を産みます。開業医の収入の1/3がそのための保険料に消えるともいわれます。これが不信社会の実態です。

最後のテクニックは「学用患者」になることです。ある日、院長が優しい言葉で「誰もしたことがない先進的医療にチャレンジしましょう。ここにサインしてくださったら医療費をタダにしますよ。」と持ちかけるのです。
 
最悪の場合、死の可能性もありえます。それでも「金」という現実の前に屈せざるを得ないのがアメリカです。このように厳しい環境の中から最先端の治療はアメリカから生まれるというわけです。これが現実なのです。しかし、そのおこぼれをいただいている日本は批判できません。

日本の医療費は44兆円、アメリカは450兆円と10倍の開きがあるにもかかわらず、その効果はというと、日本の健康寿命は74歳で世界1位、アメリカは66歳で68位と日本の圧勝です。これは日本の国民皆保険制度と医療関係者の献身のおかげに違いありません。日本の医療は大したものだということを、しっかり認識していただきたいと思います。これを後世まで伝えなければなりません。