正しいダイエットについて

寺岡内科医院 院長の元気塾202602今回は健康的なダイエットについて考えてみます。
若い女性は全員が「ダイエット」中ではないと思うくらい「ダイエット」が流行る時代です。

日本人は極端な肥満は少ないようですが、昔では考えられないような飽食で肥満の人が増えているのは事実です。肥満の指標としてBMI(体重÷身長÷身長)がありますが日本は25以上を肥満としています。肥満は健康のリスクであることはご存じでしょう。特に問題となるのは内臓脂肪といって、腹筋の内側の小腸周りの脂肪ですが、ここから分泌されるホルモンが注目されています。

例えばレプチンというホルモンは食欲を抑え、アディポネクチンは動脈硬化を抑え、TNFーαは炎症を起こすという具合に、重要な生物活性を持つことが知られています。ところがこの内臓脂肪が多くなりすぎるとレプチン、アディポネクチンが効かなくなるという逆転現象が起こって、食欲抑制が効かなくなり、動脈硬化は進むうえ、TNFーαは慢性炎症を起こして糖尿病を引き起こすというようなことが起こってきます。これで寿命を縮めてしまいます。

ところで脂肪たっぷりのお相撲さんは生活習慣病が多いかというと意外とそうではありません。CTで見ると皮下脂肪は確かにぶ厚いのですが内臓脂肪は常人と変わりません。逆にやせて見えても内臓脂肪の多い人はあるもので、この型の人に3大成人病(高血圧、糖尿病、高脂血症)が多いことが発見されました。そこで厚労省は何とかしようということで内臓脂肪の分かりやすい指標として腹囲に注目し、男性なら85cm、女性では90㎝以上を入り口として高血圧、糖尿病、高脂血症を早期発見しようというのが「特定健診」ということになります。ところで「メタボリックシンドローム」の名称で内臓脂肪の重要性を世の中に広めたのは阪大で同級生の徳永君です。

ところで、どうしたら脂肪を減らせるの?という問いに対する答えは、「身につくカロリーを減らすこと、消費するエネルギーを増やすこと」に尽きます。これが今回の中心テーマです。たとえばカロリーを減らすために糖質制限=0をやってみます。生きるためには必ずブドウ糖を燃焼させて作るエネルギーが必要で、もし糖質=炭水化物(→ブドウ糖)をやめても脂肪やタンパク質をブドウ糖に変えるようになっているので、その代償として体全体の酸性化、筋肉減少が起こって健康を害してしまいます。

またブドウ糖が減ることは生命にとって危険なので、ブドウ糖の吸収能力を高めようとして返って太ってしまうリバウンドが起こりがちです。人工甘味料はどうでしょうか?一見有効のように思えますが、体は本物の糖分を求めてやまないので、糖分の吸収効率が良くなり、結局は長期実験では効果が無いとされています。

食事回数を減らしてみてはどうでしょう。よく行われる「朝食抜き」では昼食、夕食後の血糖値が上昇することが示されています。肥満は食後血糖値が大きく関係しているので、朝食を取った方が結局体重、腹囲の増加は少ないようです。気をつけたいのは「夜食」です。夜に摂ったエネルギーは時計遺伝子の作用によって脂肪合成が高まり太ってしまいます。時計遺伝子の立場からは、朝食から12時間以内に夕食を食べることが薦められます。夜食は止めたい習慣です。食べ過ぎない、ゆっくり吸収するという観点から考えてみます。急いで食べるとたくさん詰め込めますから、せっかちに食べてはいけないということです。ゆっくりよく噛むと脳の中でヒスタミンが出て満腹中枢を刺激します。

またよく咀嚼された食物がゆっくり胃腸に流れてゆくと、小腸や脂肪細胞から食欲抑制ホルモンが相次いで出てきます。ゆっくり吸収という点からお勧めしたいのは野菜を先に食べるということです。野菜は胃の中でゼリーのようになり食物の移動が穏やかになり、食後血糖の急上昇を抑えるということで肥満を防ぐことになります。

野菜食物繊維には大きなメリットもあります。腸内常在菌の善玉菌は食物繊維を食べて酢酸や酪酸といった短鎖脂肪酸を発生させ小腸に働きかけ、糖の吸収を抑えてくれるのです。

次に消費するエネルギーを増やすことについてです。大きな消費場所はおもに筋肉です。脂肪の燃焼のカギは有酸素運動です。息がはずむ程度の全身運動を30分以上すると有酸素運動ということになりますが、早歩き、自転車、テニス、ジムでのトレーニングなどです。体で最も大きい筋肉は太ももの筋肉ですから、ここを動かせると効率が良く脂肪を燃焼させます。

階段上り、スクワットもいいですね。実はもう一つの脂肪燃焼法があります。頚部、肩周辺に存在する褐色脂肪細胞というもので、運動の結果生まれる脂肪酸をそのままエネルギーに変換できる細胞です。若い頃は多いのですが残念ながら年とともに減ります。若い頃の体温が高い理由です。

白色脂肪細胞は脂肪を蓄える細胞ですが、運動時に出てくる筋肉からのホルモン/アイリシンによって中間のベージュ脂肪細胞へと変わることが出来るのです。そして体温は上がり体型維持につながるということになります。筋肉運動の刺激は脳ではBDNFというホルモンを出させ海馬を刺激し記憶力を高め、交感神経を活性化して食欲を減らす作用もあります。

このように意識して太らない様々な努力をすることは外見上素晴らしいだけではなく、終生あなたの体と頭脳の健康を守ってくれることでしょう。