ネットの時代ですが…感覚も大切に!

寺岡内科医院 院長の元気塾202501ネットの時代です。何か新しいこと、調べたいことがあればすぐにスマホを取り出して、グーグルに「○○とは?」と話しかければズラッと答えが出てきます。これは大変ありがたくて、わたしも英語、医学用語や略語がわからないときによく使わせていただいております。最近では専門医による最新の医学や技術がたくさん投稿されていて大変勉強になります。

先日もある企業での講話で、社員の方々に最新のロボット手術の動画をお見せしたことがあります。ここまで社会は進んでいるのです。人類の獲得した知恵の伝搬速度のすごさに圧倒されそうですね。すべてデジタル技術の恩恵であることは間違いありません。この頃はペーパーレス化で、医院で購入する薬の一部は説明書がなく、箱のQRコードで検索するようになっています。

昭和生まれの人間にとっては、どうもこれがなじめない。画面を読んでみるとなるほど情報は伝わってくるのだけど、どうも頭に残らないし心に届かないという思いが残ってしまいます。この点、書面では重要な所には赤線を引いて残せるし、現物は手元に残るということで安心感が生まれ、整理さえしておけば機械を通さなくてもすぐに取り出して確認ということがスムーズに行えるので、自分の学習の歴史と獲得した知恵の深さが一体となって形として存在することになり、人間の感性を納得させてくれるような気がする…というのは屁理屈でしょうか。紙には紙の良さがあることを再発見したことです。 
 
最近若い方の受診が多くなりました。吹田市から来られることもあります。特にコロナやインフルエンザ騒ぎの時は発熱外来であふれ返っていました。みなさんスマホで「東三国、呼吸器内科」と検索してこられたようで、口にはされませんが「評価点」「口コミ」も見てこられたはずです。少しドキドキしながら私も「寺岡内科」で検索してみました。内心満点の5点近くを期待しましたが評価3.8です。
アレ!。ある医院は4.0とあります。でもこれでもましなんだそうで「評価3.8を見てやってきた」という方もあったりして、捨てる神あれば拾う神ありというところでしょう。

狭いとか、待ち時間が長いとか、職員の対応が悪かったなど、至らない点の指摘も数々あり、これから取り組んでいかなければならない課題と反省しておりますが、医療自体やサービスについてはおおむね高い評価をいただいているようです。その一部をご披露させていただきますと、「アットホームな医院・・・一つ一つ丁寧に診察してくださいます。2か月続いた咳がみるみるよくなりました」「昔ながらの医院ですが、親身になってカウンセリング、診察をして下さいます・・」。

これとは逆に、「高熱で食べれていないのに、(電話での)あの対応はひどすぎる。評価点1もあげたくないくらいです」という厳しいご意見もあります。出会いによっては世の中の評価というのはいろいろだと思い知るのです。

ただこういう流れを見て思うのは、本当の口コミが乏しくなっているのだなということです。この地域で長く生活していらっしゃる皆さんは、いろんな関係があって日常会話から噂が自然と耳に入ってきます。ところが若い人たちは忙しすぎてマンションは寝に帰る場所という感覚でしょうから、情報が少なくて勢いネットに頼らざるを得ないということなのでしょうね。淀川区がますます都会化してゆく時代ですから、それも仕方がないこととして私たちも変化してゆく必要があるのかもしれません。

ただ気になるのはネット上の「評価」の考え方です。医者の立場から言わせていただきますと、医療の本当の値打ちはなかなか分かりにくいのです。簡単に「評価3.2」などとくくられてしまっては困るのです。こちらがさんざん苦悩した治療でも結果が悪ければ「評価」は低いでしょうし、良く治っても主治医と感情の行き違いがあれば低いでしょう。出来るだけ検査、処方数を少なくして、患者さんの負担が少ないよう配慮したことなどは全く評価に上がって来ないのです。単純に「評価」を信じることには賛成できません。この先生、医院、病院が良いというのは、多分に「印象(非常に大切な感覚だと思います)」によることが多くて、相性ということも大きいのかもしれません。

医療というものは体だけを治すものではありません。心から「良かった」と思っていただいて完了するのです。肌で感じる感覚を大切にしていただきたい。こんなことを考えながら私は日々診療に当たっています。