鶏にもっと感謝を
日本人の卵好きは有名です。世界でもメキシコについで消費量が多く、平均して毎日一ケ食べているのだそうです。味もおいしく、物価の優等生、完全栄養と言われ、毎日の食卓に必要不可欠のものだといえるでしょう。
私は小さい頃、卵を食べると喘息になるので食べられませんでした。小学校高学年になり、卵アレルギーが消えて卵を食べられるようになった時の感激は忘れません。世界でこれほどおいしいものはないとさえ思ったものです。そのころ(65年前)卵一ケの値段は11円から13円だったことをはっきり覚えています。親父の給料が45000円くらいでしたから、今の値段に直すと100円以上になるはずなのに、現在でも13円くらいとほとんど変わっていないことに驚いてしまいます。ところがその陰にはとてつもない仕組みがあることをネット上ではじめて知りました。以下その要約です。
「平飼い卵」という商品は鶏を放し飼いにして収穫します。里山を走り回る鶏の姿が浮かびます。これに対して「ケージ飼い」があります。羽も伸ばせない20㎝四方のケージのアパートに押し込め産卵のためだけに餌を与え続けます。残念なことに、いま出回っている95%の卵はケージ飼いの産物だということです。ケージでは日光に当たれず、密集環境で雑菌やカビがはびこりやすく、抵抗力も弱ります。
そこで抗生物質やいろんなワクチンが当たり前のように使われることになり、長い間には耐性菌が生じることになります。現に国内産卵の50%に耐性菌が検出されているという状況なのです。そのストレスは計り知れず、2年以内に死んでゆくそうで、ふつうの鶏の1/5の寿命なんだそうです。
餌にも問題があります。経済性のために安価な遺伝子組み換え大豆が多用されます。発がんや催奇形性がとかく話題になる遺伝子組み換え食品ですが、私たちはいつの間にか間接的に食べさせれられていたのです。また添加物が加えられます。抗生物質が餌に大量に混ぜられていることは述べましたが、見栄えをよくするために色素をはじめ大量の添加物が混ぜられます。因みに黄色が濃いほど栄養がありそうに見えるのは、消費者の勝手な誤解です。本当に自然な卵の黄身は拍子抜けするほど薄い黄色なのです。濃い色は添加物によると思いましょう。
次に鶏に対する虐待をご紹介しましょう。過密状態で暮らしているとストレスがたまり、突っつき合うことが多くなるのだそうです。ケガで病気になってしまっては困るので、幼鳥の間に嘴(くちばし)の先を麻酔もなしで削り取るんだそうです。鶏の嘴といえば人間の指に相当するくらい神経が密に集まっているところで、餌を突っつくというわずかな喜びさえ奪おうというのです。先進国では禁止され始めているこの行為、日本では84%の鶏になされるそうです。
さらにひどい虐待があります。水も食べ物もなく衰弱死するのが目前になると、鶏は卵を産んで子孫を残そうとする悲しい習性があります。これを逆手にとって餓死寸前まで追い込み収穫量をあげるというなんともあくどいテクニックがあるそうです。人道的に許される行為ではないと思うのは甘すぎるのでしょうか。さすがに先進国では「家畜にも虐待はいけない、動物にも福祉を。」という言葉があり、一理あるのですが、最終的には殺して食おうというのですから、人間ってつくづく勝手なものですね。
日本では食事の前に「いただきます。」とあいさつをしますが、これは「命をいただくことへの感謝」でもあります。せめて「いただきます。」を忘れないようにしたいものですね。感謝を忘れては罰が当たろうというものです。
そんなこんなで、出来たら「平飼い」の卵をお薦めしたいのです。一ケ50円から100円くらいまでありますが、自然に近いほど値が張るのは当然です。その気になればあるもので、「イオンの平飼い卵」と「JAS認証卵」などがあり、60年前の事情を思えば法外な値段とも思えません。鶏たちのためにもう少し適正な値札が付いてもよいのではないでしょうか。コオロギ食が薦められる今、「良い食」にもっと投資をするべき時代が来ていると思います。