あなたは食べたもので出来ている

寺岡内科医院 院長の元気塾202212いくつかの企業の産業医をさせていただいておりますと、健康診断の集計の時に若い人たちでは異常値が少なく、中年、高年となるほどに異常値が多いことに気が付きます。当たり前のことですがこれが年季です。体重、血圧、コレステロール、中性脂肪、腎機能、肝機能などでの異常値です。年ともに異常値が増加し病気とされがちになってゆくのは仕方がないことですが、そこに大きな影響を与えるのが食べたり飲んだりという生活習慣であることは間違いがありません。若いころなら何をどんなにたくさん食べても平気だったのが、いつまでも続けていると中年になって病気の仲間になってしまうということです。今回は中年以後の重大テーマである食事と栄養に焦点を当ててお話したいと思います。
 
まず飲み過ぎについてのお話です。ほどほどなら「百薬の長」なのですが過ぎると・・・脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、食道がん、糖尿病、高血圧、筋肉委縮、脳委縮、人格崩壊が待っています。一日20gまでの適量がよろしいので、500ml缶ビールで1本、ウィスキーでシングル2杯、日本酒で1合くらいが目安です。同じくらいの酔い加減になります。女性はもともとアルコール分解が遅いのでその半量が良いようです。その上で「週一回の休肝日」をお忘れなく・・・。

健康診断の項目で一番異常が多いのが「脂質異常」です。たいてい肥満、肝機能異常、が伴います。ある企業では全社員人中36%の方に△印がついたほどです。男性では年とともに多くなり、幸い女性は少ないようです。やはり飲酒機会が理由でしょう。他に高カロリー食、高脂肪食、野菜不足、運動不足が関係しているようです。現代人の生活スタイルの結果なのでしょうが、やはり現代は飽食のようです。これから世界的な食糧不足が噂になったり、コオロギ食が現実化されそうな気配もあります。恵まれすぎている食環境に感謝しなければなりません。何せ私が小さい頃には「カロリー満点!」という広告がまかり通っていたのですから、各自お考え下さい。

よくいわれる塩分についてです。私たちの先祖は海から離れても生きてゆけるようにナトリウム(Na)と水を保存できるシステムを構築して上陸しました。Naが血液中に水分を保持するので細胞たちは海水の中と同様に活動できているというわけです。Naは重要なのですが、日本人はともすると塩分NaClを多く取り過ぎているのは有名です。一日10gまでとはよくいいますが、ラーメン一杯に10gの塩分と聞けばやはり摂り過ぎているのでしょう。ご存じのように塩分は摂り過ぎると血圧を高め、血管、腎臓を疲労させる弊害も持っています。ですから若いころから低塩分で慣れた方が、血管と腎臓を老化させないために良いのです。薄味に練れましょう。腎臓は漢方医学では生命力の源とされるくらい重要視されていて、寿命を決定するとさえいわれているのです。

次に、タンパク質、お肉の話です。ごちそうといえばお肉、魚がメインになるくらい幸せ感(?)をもたらしてくれるものです。

タンパク質は体を支え動かし、細胞内では酵素、やホルモンとなりエネルギーを生み出し、生殖子を形成して大事な子孫を伝えるというような生命活動の最も中心的な物質的基盤だといえますが、タンパク源といえば肉魚卵が中心なので生命活動の補充ということで貴重で有難いんだろうと思います。タンパク質といえばまず筋肉を思い浮かべますが、最近筋肉の重要性が脚光を浴びています。良く働く筋肉からは、たくさんのホルモンが分泌されます。脳神経細胞を強化する物質、代謝を促進し体温を高める物質、気分を高める物質、糖尿病を防ぐ物質、間接的に免疫力をあげる物質などが特定されています。これからも発見が続くと思います。体が大きくなる過程の若い人の肉好きは当然なのですが、老化とともに肉欲は減り、消化吸収力は減ってきます。さらに運動量が減少し筋肉が減ってくるということ(サルコペニア)で、上記の問題が次々出てくるということです。生きている限りお肉、タンパク質を十分摂って生き生きと働くことは生物として不可欠なことなのです。

いつも栄養指導的なことを考えながら生活しても面白くありませんが、心の片隅に置いていていただければ幸いです。