クスリ誕生の裏話

寺岡内科医院 院長の元気塾202402人類発生以来、人間はありとあらゆる食べ物、毒物、を食べてきました。その中で体に良いものを「薬」と呼びました。何か効きそうな成分を化学分析し濃縮したのが西洋薬で、これが現代医学の主流になっています。なかには興味深い過程で成立した薬品がいくつかありますので、ご紹介したいと思います。〇印はご自分で考えてみてください。

〇トロ〇リ〇リン/アルフレッド・ノーベルはわずかな衝撃でも爆発する火薬〇トロ〇リ〇リンを珪藻土に吸収させて安定化し、安全に持ち運びできる爆薬=ダイナマイトを発明しました。その功績は計り知れません。
ところが彼の意思に反し戦争での殺人兵器へ転用されてしまったのです。悲しんだノーベルは、莫大な遺産を人類の幸福のための研究に使うように、とノーベル賞を設立したのでした。ダイナマイト工場でのエピソードです。
狭心症持ちの多くの労働者が、工場にいる間だけ発作がないことに気がついたのです。
工場内で発生するガスが原因ではないかと考え、試しに〇トロ〇リ〇リンを少量飲ませたところ、狭心症が抑えられたというわけです。今でも狭心症の第一選択薬です。でも爆薬を舐めるなんて!

モ〇ヒ〇・ア〇ン/ケシを絞って飲むと痛みを忘れ、多幸感があることを古代エジプト人は知っていました。麻薬ア〇ンですね。その成分を抽出したのが「モ〇ヒ〇」です。脳や神経系の痛みの情報をブロックして絶大な鎮痛効果を発揮します。現代でも癌性疼痛など重大な局面で大変重要な薬であり続けます。ドイツのバイエル社はこれに少し修正を加えたジアセチルモルヒネを開発しました。これが「ヘロイン」です。快楽性と習慣性の恐ろしさについてはあまりにも有名です。さらにモルヒネに修飾を加えたメチルモルヒネという薬が生まれました。「コデイン」です。これは麻薬としての効果はなく、咳止めのスタンダードになっています。毒と薬は紙一重なのです。

〇テロ〇ド/肌荒れ、湿疹で、軟膏を塗るとたちまち治まったという経験をどなたもお持ちでしょう。ほとんどの軟膏にはこの〇テロ〇ドが入っています。開発の経過はこうです。副腎が委縮するアジソン病という病気があります。放っておくと全身衰弱で死んでしまいます。ここに牛の副腎の抽出物を投与すると治ったのです。その有効成分がコーチゾンと命名されます。コーチゾンは当時不治の病であった関節リウマチに著効すること、他の炎症にも有効であることが知られるようになり、ここからプレドニンやリンデロンという商品も生まれ、総称して「〇テロ〇ド」「副腎皮質ホルモン」と呼ばれるようになりました。関節炎、喘息、湿疹、蕁麻疹、自己免疫疾患など、どんな炎症に有効で、時には救命処置にも使われます。今回の新型コロナでも使われました。まるで万能薬ですね、ただ使いすぎると感染症の拡大、骨粗しょう症、糖尿病、胃潰瘍もありえるので医師の管理が必要です。

〇カイ〇/インカの人々が噛んだコカ木の葉は、気分を高揚させ自信がみなぎるので戦闘前には必須の薬草でした。コカの葉を抽出したのが〇カイ〇です。その効果に目をつけた薬剤師ジョン・バートンは〇カイ〇とコーラの実のカフェインを入れた飲料を作りました。コカ・コーラです。これが爆発的に売れました。(今は〇カイ〇は入っていません。)ところで〇カイ〇を口に入れると舌がマヒするのです。ここに着眼した眼科医がいました。コラーです。カエルの目に液を垂らすと針で突いても反応がないことを発見し、これが局所麻酔のヒントとなりました。〇カイ〇から習慣性という毒性を除いたプロカイン、リドカインがのちに産まれ、現代でも抜歯や皮膚切開などで局所麻酔薬、抗不整脈薬として多用されています。どれだけお世話になっていることでしょう。

ペ〇シリ〇/抗生物質の発見者といえばイギリスのフレミング博士です。培養中のブドウ球菌に青カビ胞子が混入してしまいました。実験は失敗でした。ところがよく見ると青カビの周りだけブドウ球菌が生えてない。それを見て「青カビの出した成分が細菌を殺したのだ。」と発想を切り替えた所がすごい。この成分が世界初の抗生物質ペ〇シリ〇です。この薬で一体何十億の人の命が救われたことでしょう。現第一三共の研究者遠藤は、小さい頃フレミングの伝記を読み強いあこがれを持っていました。
6000種に及ぶカビを調べ上げ1973年、肝臓でのコレステロールの合成を阻害するカビを発見したのです。これが世界初の高コレステロール症治療薬「メバロチン」となったのです。そのカビとは、奇しくも青カビのペニシリウム・シトリナムでした。第二の〇ニシリ〇ともいわれる所以です。

というように薬のもとになる原料はどこに転がっているかもしれません。薬品会社の研究者は世界中の土やカビや毒物を血眼になって探し回っているのです。