私のパワースポット、篠山の中秋
若い女性はパワースポットが大変お好きです。ネットで紹介されると御朱印帳を手にたくさんの女性が押し寄せます。神秘的なものに感動する、何かにすがりたい、守られたいという願いでしょうか、行ってみるとたいてい山や森、大きな岩、滝、神社などの場合が多いようです。実際行ってみると、心が洗われる、元気が出るという印象があって、なるほどと思えることが多いものです。女性はそういった場所を感じる感性が豊かなようで、宇宙の「気配」を敏感に感じておられるからではないでしょうか。これは大変に深い考察が必要になると思いますので後日お話させていただきたいと思います。
今回は私の身近なパワースポットについてのお話です。パワースポットというと深い安らぎを与えてくれるところという意味があると思います。私にとって深い安らぎを与えてくれるところというと、まず篠山があります。
今月は篠山のPRをさせていただくことになります。ここは瀬戸内海と日本海の真ん中に位置し、周りを山々が取り囲む盆地です。町のはずれを流れる清流、広く敷き詰められた田園、点在するお寺と神社、城跡を中心とした街のたたずまい、江戸時代からの商店街、武家屋敷、商人宿、マツタケ、枝豆、黒豆、牛蒡,シイタケ、山芋、山椒、猪肉、鹿肉、川魚、地酒などの特産品、古くからの焼き物、どれをとっても日本人の心の奥底に触れるような景色、文化、お土産品にあふれています。それに加えて人々には歴史を大切にする誇りと落ち着き、田舎にしてはの現代性があります。田舎とみやびの共存といえるでしょうか、それはここの城が大坂城攻めのために徳川家康によって築かれたこと、ここ青山藩は老中を輩出したことと無関係ではないようです。
先日友人家族と街中を外れた山あいの集落、丸山地区を夕刻に訪れました。山谷の狭い小川に沿って散策する姿を思ってください。耕運機のわだちが残る地道です。田んぼの土手には彼岸花が燃えるように咲いています。通りすがりのススキの穂が風にそよぎながら夕日を迎えています。ススキを透かして見る夕日のまぶしさ。薄い雲が模様を描く空は真っ青です。少し陽が傾いて来ました。影が長くなっています。時折涼しい風がほほをなでて通ります。生きていてよかったと思える瞬間です。チョロチョロと小川のせせらぎ、あちこちの叢ではコロコロと虫の声が始まりもの寂しさを誘います。ああ、いい香りがただよいます。刈り取った稲穂を焼く煙でしょうか。山のふもとで農作業をしている麦藁帽のおじさんも今日の仕事を終わったようで、軽トラックに収穫物や農具を放り込んでいます。カラスの群れがカァカァーと上空を帰ってゆきます。どこかでお寺の鐘がゴーンと響いています。夕日が山の影に沈んでしまいました。空も次第に水色から紺色に変わり、田んぼも山もうす暗い世界に包まれました。コオロギの声がさらに大きくなります。チョロチョロと小川のせせらぎが聞こえます。そこらのおうちでは明かりが灯り始めました。人の気配の温かさを感じます。家族そろって団らんでしょうか。ここには100年前と同じ営みが続けられている平穏さがあります。少し肌寒くなってきました。谷間の気温の変化はきついのです。そろそろ私たちも予約した古民家レストランへ参りましょうか。なかなか予約の取れないフレンチの「ひわの蔵」です。土地のお土産は先に買っておきました。お米、枝豆、山芋、牛蒡、椎茸、山椒煮、味噌、地酒、いつも同じメンバーです。さすがに名産のマツタケは手が出ません。
こうしてその日は心からの充足感に満たされて家路につくことができました。日々神経をとがらせて暮らしている都会人とって、ここがパワースポットの一つの形なのです。どれほど心癒されることでしょう。皆さんもお一人お一人が心に秘めたところがおありだと思うのですが、いままで特に意識されたことのない方は、貴方だけのパワースポットを見つけられることは、一生の宝になると思います。日本にはそんなところは山ほどあります。歴史のある美しい国に生まれたことの幸せを感じる今日この頃です。