子供をアレルギー体質にしていませんか?

寺岡内科医院 院長の元気塾202609今は少子化でほとんどの子供は長子か第2子というご家庭が多いのですが、むかしは兄妹の数が4、5人というのが当たり前でした。当院に来られる80歳以上の方は田舎の大家族の中で育った方が多いです。私の母などは8人姉妹でした。そんな中で育てられると何番目の子というので、それぞれ気質の違いというものが生まれます。特に長男、長女は際立っています。おとなしくて自己抑制の優等生型の長男、長女、型にはまらず活発で自己主張型の次男、次女というのが大方でしょう。

こんな兄弟関係がアレルギー体質にもありそうなのです。つまり長男長女は10~20%アレルギー疾患になりやすいというのです。どうやら親が手をかけ過ぎるとアレルギーが多くなるということらしいです。「母親が勤めに出ていると子供はアレルギーになりにくい」という研究もあります。共通するのは清潔すぎる環境が関係していることです。初めての赤ちゃんは大変です。パパ、ママの関心が一身にそそがれます。清潔な環境を望むあまり、あれしたらダメ、これしたらダメと規制が一杯です。哺乳瓶は煮沸消毒され、お母さんの乳首はアルコール消毒され、赤ちゃんはなんでも拾って舐めて確かめたいのに許されません。少し大きくなると「汚い土に触ったらダメ!」「落ちたものを拾って食べたらだめ!」「食事の前に手をきれいに洗いましょう」と無菌状態が最善のことのようにして育てられます。二人目三人目となると親の方も要領が分かってきて手を抜きがちになりになる傾向があります。じつは私も祖父母にとっては初めての孫でして、期待の男の子ということもあって、過保護状態で育てられました。そのストレスもあったのでしょう、典型的なアレルギー疾患である小児喘息になりました。

妹はというと自由奔放に育ち病気知らずのおてんば女子に育ちました。これまで何人もの小児喘息の方ともお付き合いしましたが、共通していえるのは、おじいちゃんおばあちゃん、家族から大事にされた「良い子」が多いのです。この現象を合理的に説明するのが「衛生仮説」という学説で、「きれい過ぎる環境で育つとアレルギーが多くなる」というのです。

ここで正常な腸内細菌叢とアレルギー疾患の関係がクローズアップされます。「大事な乳児期に、清潔すぎて微生物への暴露が少ないと、腸内細菌叢(群)が未発達になる。すると免疫反応の制御を担うリンパ球(Treg)が育ちにくくなる。すると、もともと人間が陥りやすいTh2系の免疫反応(=アレルギー)をうまく抑制できなくなるので、アレルギー疾患を起こしやすくなる」のだというのです。(昨年阪大の坂口先生がこのTregの発見でノーベル賞を獲得されました)つまり正常な腸内細菌叢という細菌群がTregという免疫反応を抑制する重要なTリンパ球を育てているということなのです。それでは望ましい腸内細菌叢とは何でしょう。それは母親の持っている細菌をもらうことであり(そのために出産時に少量の便をもらいますし、初乳には選ばれた腸内細菌とそれに付着する抗体が含まれています)、また環境から多様な細菌を口からもらって育てることです。ペットを飼っているとアレルギーになりにくいという研究もあります。どうしても不潔になりがちなので返って良いのでしょう。細菌を選ぶのは腸に多いIgA抗体です。そして望ましい腸内細菌叢は3歳までに完成しなければなりません。なぜなら一生その構成で過ごすことになるからです。

地球上には全人類の総重量の1000倍以上の細菌が広がっているといわれます。人間はバイキンまみれで生きていかざるを得ない宿命をもっています。共存する以外にないでしょう。細菌の種類を大きく分けると80門あり、そのうち人間の腸にはわずか4門の細菌しか定住が許されていません。選別しているのはIgAという抗体です。腸内のIgA抗体が良い候補者を積極的に選んで定住させているのです。腸が免疫活動の主舞台といっても過言ではありません。そのために全リンパ球のうち70%も張り付けているのです。(リンパ球から抗体が産生されます)このように腸内細菌叢とリンパ球は切っても切れないパートナーなのです。これが満足に育っていないと異常な免疫反応、例えば食物アレルギー、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、喘息、1型糖尿病、などの異常が生じるといわれるのです。

このように考えてくると、少々不潔な環境の方が免疫力が正常化されるように思われてきます。体を一つの国にたとえると免疫力は軍隊にあたります。正しい軍事力(体力、免疫力)を育てることが必要ですし、実戦(不潔・感染)を経験させることも重要です。清潔ばかりを追求してちいさな衝突さえも経験できないでいると(無菌状態)、ひ弱な国(弱い体)、パニックに弱い国(アレルギー)になってしまうということではないでしょうか。
 
今の子供は大事に大事に育てられます。衛生思想も過剰なほど徹底しています。そこで提案です。「バイキンはすべて悪い、バッチイ、バッチイ」とばかり言わず、少しくらい汚くても子供の自然免疫力を高めるための良いチャンスだと思って見過ごすくらいの度量を持てる親になりたいものです。子供の頃は病気ばかりしていた弱い子が、兄弟の中でいちばん長生きしているという話はよくあることですから。