コロナ禍のインフルエンザ予防接種、私はこう考えます。

寺岡内科医院 寺岡院長202011インフルエンザの予防接種が始まりました。 

コロナへの配慮から65歳以上の高齢者に早々と10月1日からの接種です(高齢者は無料)。11月から一般の方の接種が始まります。国は充分量の6300万人分を確保するとのことですので、ここは国を信頼したいと思います。

今回の特別措置はもちろんコロナとの合併を恐れてのことですが、私は少し(?)の気持ちもあります。といいますのは… まず今年の1月から3月までのインフルエンザ報告数の少なさです。例年の半分でした。

また今年夏から9月末の厚労省のまとめでは、昨年は4543人でしたが今年はたったの7人しか報告がありません。中国、カナダ、イギリス、韓国でも同様で、90%近く減少しているようです。

春に向う南半球でも、アルゼンチンなどごく一部の国を除き、ほとんどの国でインフルエンザが流行していないそうです。なぜこんな現象が起こっているのでしょう。

多くの専門家は、手洗い、マスク、適正距離、交通制限などのコロナ対策が有効に働いたと言います。それも正しいのでしょう。もう一つの理由として「ウィルス干渉」という言葉が上がってくるようになりました。簡単にいうと「一つのウィルスが流行ると他のウィルスが流行らなくなる。」というものです。

そういえば今回のコロナ禍でもそんなことがありました。今年のインフルエンザはちょうどコロナ騒ぎと入れ替わるように終息しています。まるでウィルス同志が相談しあっているかのようですが、これには免疫学的な説明が可能です。ウィルスが入って来るとリンパ球のT細胞が猛然と攻撃を開始します。そのときに生体防御系を活性化するいくつもの因子、サイトカイン群を出します。これが次のウィルスの侵入を妨げるというわけです。

サイトカインが分泌されるとき、発熱、倦怠、痛み、食欲不振という症状を経験します。高熱はウィルスを壊し、倦怠はエネルギーを保存する目的があるそうです。しんどい時は身体が一生懸命外来の敵とたたかっているのですね。コロナが蔓延した各国でインフルエンザが流行らなかったのは「ウィルス干渉」が原因だと思っています。まず両者が共存することはないでしょう。そこで今年のインフルエンザワクチン実施時期について思案しているのです。

日本ではすでに全国的にT細胞性免疫状態にあると思っているのでコロナの再燃は無いと思いますが、もしインフルエンザを野放しにしたら「ウィルス干渉」によってコロナは流行らないのでは、などと考えるのです。でもこれはやはり冒険でしょうね。そこで軽いインフルエンザに罹るつもりで、インフルエンザワクチンをコロナが増える直前にぶつけてみる…。そうするとコロナが抑えられるのではないか…などいろいろ考えまして、私なりの答は、コロナが増え始めるのを聴いてから接種すれば効率的ではないかということなのです。

国の説明では「ワクチンで50%の人が感染を免れ、重症化を80%防げる。接種から3週後に免疫がつき、3ヶ月効果がある。」とされています。こんなことを総合すると、最終をシーズンの1ヶ月前、すなわち12月半ばまでに設定すれば良いんだろうということになりました。

ただし忘れていけないのはインフルエンザには特効薬があることです。今ではたったの一回の投与で半日後には回復に向うことも出来ます。

ワクチンが絶対ではないのです。こんなことを若い皆様もお考えいただいて、ゆっくり予防接種を受けていただいたらと思います。決してあわてることはありません。