抗酸化物質は美味しい?
健康のために緑茶のカテキン、大豆のイソフラボン、ブルーベリーのアントシアンが良いとかいわれます。これらはポリフェノールの仲間で抗酸化物質といわれます。ポリフェノールに関してフレンチパラドックスという面白い話があります。「フランス人はバターやチーズで油を多量に摂っているのに、なぜか心筋梗塞や狭心症などの冠動脈硬化症が少ない。その理由は赤ワインに含まれるポリフェノールをたくさん摂っているからだ」というので赤ワインがもてはやされた時代がありました。実はオリーブオイルや魚の摂取、喫煙量、運動量などが絡んでいるらしいのですが、ワイン好きにはうれしいお話ではあります。他にも抗酸化物質としてはカロテノイドが有名です。赤や黄色の野菜の色素で、人参に多いカロテン、トマトに多いリコピン、葉野菜に多いルテインなどあります。ビタミンにもビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなど抗酸化作用のあるものがあります。それらは光合成の中で生まれた活性酸素を消去するための抗酸化物質なのです。今回は「酸化」と「抗酸化」について考えてみます。
「酸化」とはなんでしょうか。それは酸素が物質にくっつく現象をいいます。
早い話が、紙が燃えることですし、鉄がさびる現象です。酸化するとエネルギーを放出しながらその物質は朽ちてしまいます。本来、原始生物に酸素は大敵でした。触れるとやけどして生きていけないからです。ところが進化の歴史の中で酸素が生み出す膨大なエネルギーをうまく使って活動力を高めようとする細菌が現れました。そのおかげで多細胞生物が生まれ、体が大きくなり、臓器がうまれ、移動能力が高まり、競争力が高まるという進化が進み、地球上の生物が大繁栄してゆくことになりました。今やほとんどの生物は酸素が無ければ生存できないくらい酸素に依存した生命活動をしているわけです。
ところがいいことばかりではありません。酸素を取り込むとその1~2%は活性酸素という破壊的な酸素に変わってしまうという難点があります。これは生きている限り宿命のようなもので、長い間には活性酸素が組織全体をゆっくりと劣化させてゆきます。それを一言でいうと老化ということになります。声はしわがれ、肌は張りを失ってしわが入り、血管は弾力を失って硬くなり、すべての臓器は少しずつ機能低下をしてゆくのです。また後天的な刺激、例えば強い光、乾燥、高熱、炎症などによっても活性酸素が生まれ、組織障害を起こし続けるというのが人生というものです。人間もビタミンE、カタラーゼ、グルタチオンなどたくさんの抗酸化物質を持っていますが、ただそれらは生化学の話なので何をすると良いという話になりにくいのです。そこで植物由来の抗酸化物質に頼るということになり、栄養学的な関心となっているのです。
難しいお話はこれくらいにして、大量に摂った場合のポリフェノールやカロテノイドやビタミンEなどの効用について、客観的な証拠はどうなっているのでしょう。
[ポリフェノール] たくさん摂った人のグループで心筋梗塞や脳卒中が少なかったというスペイン、日本の高山での研究がありますが、大量に摂ればこれらの疾患が予防できるというところまでは証明されていません。
[カロテノイド] 血中または食事中のカロテノイド濃度が高いほど、心血管死、脳卒中、ガンによる総死亡が少なかったというアメリカの研究があります。
[ビタミンC、E] 心血管死、脳卒中、ガンによる総死亡への効果は示されていません。
ビタミンCで風邪の罹病期間を8%位短縮できるという日本の研究があります。
残念なことに「有名な抗酸化物質をたくさん摂れば摂るほど健康に良い」という単純なお話ではなさそうです。でもこんなことに気を使える人は食材の新鮮さ、多彩さ、栄養素などに当然敏感な人でしょう。きっと美しいテーブルで美味しそうなお料理が並んでいるはずです。豊かなこころが育ち、きっと健康につながるはずです。